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「そういやその隣に入ってた鶏肉、柚子胡椒使った?」
そんな風味のする照り焼きチキンが入っていて、口に入れた時に広がった柚子の風味が堪らなく旨いと思った想だ。
「うん。柚子胡椒、冷蔵庫にあった小瓶を使わせていただいたの」
気に入ってくれたかな?と思いながら想を見上げたら、彼はすぐに察してくれたみたいに「すっごい好みの味で食った瞬間驚いた」と微笑んでくれる。
「何となく弁当箱ん中から柚子の香りがするなぁとは思ってたけど、まさかそれが照り焼きからだとは思わなかったわぁ」と心底感心したように言ってくれた想に、
「喜んでくれたなら良かった……」
ホッとして微笑んだら、「けど……」といきなりトーンを落とした声音でつぶやかれて、結葉は思わず「えっ」と声を漏らす。
「でも……?」
(卵焼きと照り焼きは大丈夫だったけど、他に何かキライなものが入ってた、とか?)
そう思って、ゴクっと唾液を飲み込んで、続けられる想からの言葉を待つ結葉の顔を、想が何故か心配そうに覗き込んでくる。
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