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想に至極真摯な眼差しで射抜かれた上、そんなことを言われてしまった結葉は、にわかに緊張してしまう。
「あの……」
戸惑いを眼差しに乗せて、恐る恐る想を見上げたら「俺の部屋で話そっか」とくるりと踵を返された。
結葉は訳も分からないまま想に付き従うしかなくて。
(想ちゃん、何だかすっごく怖い顔してた)
それが、想らしくないから落ち着かなくて堪らない。
無言で想のあとについて階段を昇って。
結葉がいま使わせてもらっている部屋の並びとは階段を挟んで斜め向かい側に当たる想の部屋に入る。
「お邪魔します……」
そうつぶやいて結葉が中に入るなり、想が入り口ドアに鍵を掛けてしまった。
「あ、あのっ。想ちゃん?」
カチャリという無機質な音に不安になって、結葉が思わず想に呼びかけたら、
「ごめんな、結葉。不安にさせちまって」
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