31.大切な連絡

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 封筒の中にはクリアファイルが入っていて、その中に緑色で印字された二つ折りの書類――離婚届が入っていた。  偉央(いお)が記入すべき「夫」の欄は、見慣れた偉央(いお)の美麗な文字で埋まっていて。  所定の位置に捺印してあるのはもちろんのこと、もしもに備えてだろう。丁寧に捨印までちゃんと()されていた。  結葉(ゆいは)は離婚届を見るのも初めてなら、書き方も詳しくは分からないというのが正直なところ。  偉央(いお)のことだから、彼はちゃんと書き方を調べて抜かりなくこの書類を仕上げたんだろうな、とどこか他人事(ひとごと)みたいに思ってしまう。  離婚届を手にそんなことを考えていたら、(そう)が心配そうに「結葉(ゆいは)?」と声をかけてきて。 「あっ。だっ、大丈夫っ」  思わずそう答えてしまってから、逆に大丈夫じゃないみたいじゃない、と思ってしまった結葉(ゆいは)だ。  クリアファイルのなかには離婚届の他に長3(ながさん)サイズの封筒が二封入っていた。  結葉(ゆいは)は、ひとまず全部ファイルの中から出してひとつずつ中身を確認していくことにする。
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