735人が本棚に入れています
本棚に追加
偉央と自分は、少なくとも法的にはまだ夫婦だし、山波一家に負担を与えるよりは理に適っているように思えた。
でも――。
「想ちゃん、私、やっぱりこのお金は使いたくない。あと……、で、出来れば……その……直接偉央さんに受け取れない理由を話してからお返ししたい」
しどろもどろになりながら言ったら、「そっか」と想は静かに頷いてくれた。
想にだって、きっと思うところは沢山あるはずなのに。
彼が、そういう諸々の感情を全て押し殺して、結葉の気持ちを尊重してくれようとしているのをひしひしと感じて、結葉は想に対して感謝の気持ちと同じぐらい、申し訳なさが込み上げてしまう。
「ごめんね、想ちゃん」
つぶやくように付け加えたら、「前に言っただろ、結葉。謝るくらいならどうするんだっけ?」と即座に続けられて。
結葉は、寸の間逡巡して、「想ちゃん、いつも私のために有難う」と言い直した。
最初のコメントを投稿しよう!