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想はそれに対して「おう」と一言返してくれると、「――じゃあ、とりあえずそれは保留な」と小切手を指差す。
結葉は頷きながら、手元の小切手と、偉央からのメモ書きを封筒に戻して、クリアファイルに入れ直した。
もう一封の封書には表に「結葉へ」と書かれていて。
結葉はその文言を見た途端、ギュッと胸が締め付けられるような切なさを覚える。
偉央との婚姻生活は決して楽しいとは言い難かったけれど、結葉が寝込んだりした時には、偉央は結葉を労わるように消化の良い手料理を作ってくれた。
偉央が仕事で不在になるような場合は、その料理の傍らに、必ず今みたいに「結葉へ」と書かれたメモ書きが付けられていたのを思い出したのだ。
手紙の方はベロの部分がしっかりと糊付けされていて、未開封のまま。
「さすがにお前宛の手紙は中、見てねぇから」
結葉の戸惑いに気付いたように、想が言った。
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