31.大切な連絡

30/42
前へ
/848ページ
次へ
 (そう)の、温かくて大きな手のひらの感触に、結葉(ゆいは)は一瞬だけビクッと身体を跳ねさせると、でも少しずつ、少しずつ……平常心を取り戻していった。 『……ゆいちゃん?』  電話口、明らかに動揺している様子の娘の気配に、美鳥(みどり)が心配そうに呼びかけてきて。  結葉(ゆいは)はスマートフォンを一旦口元から離すと、一度だけ大きく深呼吸をした。 「――ごめんなさい、お母さん。心配を掛けて」  次に電話を耳に当てたときには、結葉(ゆいは)の声はさっきみたいに震えたりしていなかった。 ***  家の管理を任せている、お隣の山波(やまなみ)建設の長男坊――山波(やまなみ)(そう)から、スマートフォンにメッセージが入ったのは、丁度主人である茂雄(しげお)を仕事に送り出してしばらくしてのことだった。  スマホに表示された時刻を見ると、八時過ぎ。  日本はここ――ニューヨークより十四時間ばかり進んでいるはずだから、夜の二二時(じゅうじ)くらいだろうか。
/848ページ

最初のコメントを投稿しよう!

735人が本棚に入れています
本棚に追加