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想の、温かくて大きな手のひらの感触に、結葉は一瞬だけビクッと身体を跳ねさせると、でも少しずつ、少しずつ……平常心を取り戻していった。
『……ゆいちゃん?』
電話口、明らかに動揺している様子の娘の気配に、美鳥が心配そうに呼びかけてきて。
結葉はスマートフォンを一旦口元から離すと、一度だけ大きく深呼吸をした。
「――ごめんなさい、お母さん。心配を掛けて」
次に電話を耳に当てたときには、結葉の声はさっきみたいに震えたりしていなかった。
***
家の管理を任せている、お隣の山波建設の長男坊――山波想から、スマートフォンにメッセージが入ったのは、丁度主人である茂雄を仕事に送り出してしばらくしてのことだった。
スマホに表示された時刻を見ると、八時過ぎ。
日本はここ――ニューヨークより十四時間ばかり進んでいるはずだから、夜の二二時くらいだろうか。
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