31.大切な連絡

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 別れを切り出したのはどっちから?と聞けなくて、思わずどっちとも取れる当たり障りのない言葉を返したら、『そっ、そんなこと、ないっ!』という声とともに、カサカサという音が聞こえてきた。  きっと結葉(ゆいは)のことだ。  音声通話だから見えないのに。  結葉(ゆいは)はきっと、必死になってフルフルと首を横に振ってくれているんだろう。 『お母さんのお陰でっ、私、辛かった時、すごく救われてたっ。こっちにいるときは……沢山他愛(たわい)もないお話に付き合ってくれてっ、本当にありがとう』  勢い込んだように言われて、美鳥(みどり)は自分が日本にいた時にはすでに結葉(ゆいは)の苦しみは始まっていた?と気付かされた。 「ゆいちゃん、お別れを切り出したのって……」  結局、聞かずにはいられなかった美鳥(みどり)だ。 『そ、それは……』  そこで言い淀んだ結葉(ゆいは)に、美鳥(みどり)はもしかして、と思う。  結葉(ゆいは)のことだから、自分の立場が悪くなる――偉央(いお)から離婚を切り出された――ことなら割とすんなり話してくれる気がする。
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