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さっきから結葉が何かを言おうとするたびに、それを遮って質問を投げかけてしまっている自分に気が付いた美鳥は、グッと堪えて言葉を飲み込んだ。
ダメだ、マシンガンみたいに一方的に話してしまって、娘の言葉を聞いてあげられていない。
これが、日本にいる頃にも結葉の異変に気づけなかった理由かもしれない。
今更だけど、そんな風に思った美鳥だった。
***
「美鳥さんに、思ってることちゃんと話せたか?」
結葉をすぐそばで見ていて、彼女が通話口に向かって「でもっ」とか「違うの」とか、そんな言葉ばかりを言っているように思えた想だ。
結葉は決して無口な方ではないけれど、熟考して話すところがある。
相手から余りにも矢継ぎ早に畳み掛けられると、上手く話せないところがあるのを知っているから、ちょっと気になってしまった。
「うん。最初はなかなか聞いてもらえなかったんだけど……途中から私のペースに合わせてくれて。――ちゃんと話せた……と……思う」
実家に一人で住むのが心細くて、山波家で家事手伝いをしながらお世話になっていること。
ほんのちょっと前に偉央から離婚届などが送られてきたこと。
恐らくは、そんなに揉めずに離婚できるであろうこと。
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