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因みに離婚の理由は、〝子供に対する考え方の相違〟とだけ伝えるに留めた結葉だ。
「私は子供、欲しかったんだけど、偉央さんは欲しくないって。ずっと話し合ってきたけど……どうしても折り合いがつかなかったの。私ももう若くはないし……我が子を望むなら、このまま偉央さんとは一緒にいられないって思ったの」
結葉の言葉に、美鳥は『そこが擦り合わせられないなら、確かに婚姻生活を継続するのは難しいかも知れないわね』と納得してくれて。
『でも……。それでももう少しちゃんとお話ししたら何とかなったりしないのかな?』
と続けたのだ。
結葉は「ごめんね、お母さん……」と、まるで上手く立ち回れなかった自分が悪かったみたいに謝っていた。
想も横で聞いていたからそのやり取りはなんとなく把握していたのだけれど。
「それはそれとして――旦那からのDVの事、本当に伝えなくてよかったのか?」
想は(そこを曖昧にしたままにするから、美鳥さん、娘の離婚に対して煮え切らない感じになっちまってんだよな?)と思ったのだけれど。
当の結葉は「済んだ事で両親に心配を掛けたくないの」と淡く微笑むばかり。
「けど――」
それでも更に言い募ろうとしたら、結葉にゆるゆると首を振られてしまった。
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