31.大切な連絡

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 今はたまたま結葉(ゆいは)の両親は遠方にいるからバレずに済んでいるけれど、結葉(ゆいは)の足首についた足枷(あしかせ)による傷跡は、アザになってくっきりと彼女の脚に残っている。  年々薄くなっていくことはあっても、きっとすぐに消えることはないだろう。  監禁のことを話さずにそれを誤魔化せるかどうか。  正直(そう)にもいい案は思い浮かばないけれど、夫から精神的にも肉体的にも暴力を受けていたと少しでも話しておけば、皆まで言わなくても察してくれる部分というのはあるはずだから。  変に隠し立てした方が、人は詮索したくなる。 「けど……(そう)ちゃん。お母さんたち、言ったらきっと傷付く……よね?」  結葉(ゆいは)偉央(いお)との見合いを勧めたのは他ならぬ両親たちなのだから。  (そう)の指摘に対して、結葉(ゆいは)がソワソワと落ち着かない様子でそう言ってきて。  (そう)は、あえてそんな結葉(ゆいは)に、「逆に誰も傷付かない〝離婚〟なんてあんのか?」と、突き放すような物言いをした。  (そう)としては、結葉(ゆいは)ばかりが辛いのやしんどいのを一人で背負うくらいなら、みんなで分担したんでいいじゃねぇかと思っている。  それが、血を分けた親なら尚更だ。 「それにな、結葉(ゆいは)。人の口に戸は立てらんねぇぞ? 親御さんが日本(こっち)に戻ってきた時、思わぬルートで真実を知る可能性だって否定出来ねぇじゃねぇか。もちろんいますぐに、とは言わねぇよ。追々で構わねぇから……DV被害に遭ってたこと、ちゃんとご両親にも話せ。――な?」
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