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こんな風に結葉を失って一人きりにされてしまうくらいなら、子供に乱されながらも彼女がそばに居てくれる生活の方が何百倍も何億倍も〝マシ〟だったんじゃないかと思ってしまった。
(――ま、今更考えても詮無いことだ……)
そう思いはするのだけれど、気が付けば一人悶々とそんなことばかり考えてしまっている。
薄暗がりの中。
最近ずっと、寝泊まりに利用している『みしょう動物病院』待合室の長椅子に一人ぼんやり横たわって、偉央はあれこれと物思いに耽る。
朝と昼だけは辛うじて何とか口に出来ている偉央だけれど、夜は何も食べる気になれなくて、結葉が出て行ってからというもの、まともに夕飯を摂っていない。
なのに夜も別に空腹に悩まされることもないし、朝だって殆ど義務のように身体を動かすための〝燃料〟として食事をしているだけの偉央だ。
仕事に支障が出ない程度に、と惰性で食べているに過ぎない〝食べるという行為〟は、当然何の味も感じさせなかった。
気が付けば、無性に結葉が作ってくれたご飯が恋しくなって。
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