32.偉央の泣き言と結葉の内緒ごと

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***  今朝(そう)に宣言した通り、結葉(ゆいは)は街に出ていた。  多くのショップが開店する十時過ぎを目掛けて外出してみたのだけれど、考えてみればここ数年、一人でこんな風に街に出てフラフラとショッピングを楽しんだことはなかったな、と思い出した結葉(ゆいは)だ。 (どうしよう。私、いま、すっごく楽しいっ)  もちろん、休日などは偉央(いお)と一緒に大型モールに買い物に出たりはしていた。  だけど、あれはずっと偉央(いお)に監視されている感じがして気詰まりがして、心からウィンドウショッピングを楽しめていなかったから。  そう言えば(そう)に助けてもらってすぐの日、彼と一緒に出かけた市外のモールは、偉央(いお)とのショッピングと違って大分開放的な気分でアレコレ見て回ることが出来た。  でも、あの時はまだ気持ちに今ほどゆとりがなかったから。 (一人で自由に動き回れるのって……こんな感じだったっけ)  独身の頃は普通に出来ていたことだし、何なら一人でうろうろするのは寂しいから、誰かお友達と来ればよかったなぁとか思っていたと言うのに。  今は誰にも気兼ねせずマイペースにウロウロ出来ることが、ひたすらに幸せだと思ってしまった。
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