32.偉央の泣き言と結葉の内緒ごと

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偉央(いお)さんがお仕事中の間に、マンションの部屋にこっそり入って、置いて帰る――?)  もし偉央(いお)と鉢合わせたらと考えると、すごく怖かったけれど……クール便を使ったりして送ると、近場なのに送料ばかりがやたらと無駄にかかってしまう。  無一文に近い結葉(ゆいは)は、なるべくならそういう経費を掛けたくないと思ってしまって。  バスに乗って最寄りのバス停まで行って、こっそり置いて帰るのが一番お金が掛からない方法に思えた。  (そう)に言えば、きっと連れて行ってくれて、部屋まで付いてきてくれるだろう。  その方が、絶対に安心で安全だと、結葉(ゆいは)にだって分かっていた。  だけど――。  散々酷い目に遭わされたくせに、その相手にこんなことをしたいと思っている自分の気持ちを、(そう)に理解してもらうのはすごく難しい気がして。  何より、離婚したい相手に対して、未だにこんな気持ちを抱いていることを(そう)には知られたくないと思ってしまったのだ。
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