32.偉央の泣き言と結葉の内緒ごと

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 ヤッター!と諸手(もろて)を挙げて喜ぶ(せり)を見て、「そんな風に言ってもらえるの、すっごく嬉しい」って微笑み返したら、横からヒョイッと手が伸びてきてつくねの照り焼きを一個、さらって行ってしまった。 「あっ」    (せり)が抗議の声を上げる目の前で、純子が口をモグモグさせながら「ん〜、美味しっ♡」と微笑んだ。 「お母さんっ!」  ムムッとする(せり)を、 「まだ、たくさんあるから大丈夫だよ?」  結葉(ゆいは)が苦笑しながらなだめてみたけれど、(せり)は自分の弁当箱のフタを閉めて包むまで、そんな母親を警戒し続けていた。  きっと(せり)にとってはハプニングとしか呼べない母子(おやこ)のやり取りも、結葉(ゆいは)にはとっても微笑ましく見えて。  自然口の端に笑みが浮かんでしまう。 「おはよー。……って結葉(ゆいは)、お前朝っぱらからなに楽しげに笑ってんの? 何か面白(おもしれ)ぇーことあった?」  (そう)が起きてきて、結葉(ゆいは)の表情に気が付いてそんな言葉を投げかけてきて。  結葉(ゆいは)がふるふると首を振っていたら、入り口付近で立ち止まった息子を押すようにして「こら、(そう)、でっかいのが通路を塞ぐな」と公宣(きみのぶ)がキッチンに入ってくる。
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