734人が本棚に入れています
本棚に追加
材料をインして炊飯スイッチを押すだけで、手軽においしいスープが作れるので、忙しい朝には結構重宝したのを覚えている。
「わぁー、何か今日の朝ごはん、カフェみたいでかっこいい!」
芹が言ったら「たまにはパンもいいでしょ〜?」と純子が微笑んだ。
そう。基本的には朝はお米が食卓に登ることの多い山波家だ。
現に結葉がここに来て半月以上経ったけれど、朝食にパンが出て来たのを見たのは初めての経験だった。
前にアパートで想と一晩明かした朝、材料がなくてパンを朝食にしたことがあったけれど、あのとき想ちゃん、本当はご飯が食べたかったんじゃないのかな?とふと思ってしまった結葉だ。
それで、見るとはなしにチラチラと想を窺い見てしまって、「ん? どした?」と想に小首をかしげられてしまった。
「あっ、――なっ、何でもないっ」
実際、過ぎてしまった日のことを言われても今更だよね、と思いながらソワソワとそう答えた結葉だったけれど、想には煮え切らない結葉の態度がやたらと引っかかってしまって。
実質的には想に対して別のこと――偉央への差し入れ――を隠していた結葉だったけれど、この時想に違和感を抱かせたことが、結果的には結葉を救うことになるのは、もう少しあとの話になる――。
最初のコメントを投稿しよう!