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「あのね、想ちゃん。私、今日も午前中、ちょっとだけお出かけしてこようと思ってて」
想に弁当を手渡しながら言ったら、「どこに?」と問われて弱ってしまった結葉だ。
素直に「偉央のところへ食べ物を届けに」と伝えるのはさすがにないと思ったら「昨日百均で……」と思わず口から出てしまって、自分でも何と続けたら良いのか分からずに戸惑ってしまう。
「……百均?」
それでもそれを想に繰り返された途端、「欲しかったものが在庫切れでね。店員さんに聞いたら、他店舗から在庫を取り寄せるから後日もう一度出直して欲しいって言われたの」と驚くほどスラスラと嘘がつけてしまってびっくりする。
「ああ、そうなんだ」
昨日結葉が買い物に出ていたことを知っていた想は、結葉の嘘にいとも簡単に騙されて。
「今日は、結構寒いし暖かくして行けな?」
想にポンと優しく頭を撫でられて、結葉は俯いてギュッと唇を噛んだ。
こんなにも優しくしてくれる想に嘘をついてしまった自分が、ものすごく醜いものに思えて「うん、有難うね、想ちゃん」と答える声が、不自然に震えてしまった。
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