33.久々の我が家

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***  独身の頃、ハムスターの福助を連れて、『みしょう動物病院』までバスで行ったことがある。  山波家(やまなみけ)近くの最寄りのバス停でお目当てのバスが来るのを待ちながら、結葉(ゆいは)はその時のことを思い出していた。  母・美鳥(みどり)が作ってくれたトートバッグに入れた福助が、キャリーケースの中でチョロチョロと動くたび、コトコトとケージが揺れるのを感じて、何度も何度も隙間から中の様子を確認して。  黒々としたまぁーるい目と視線がかち合うたびキュンと胸が高鳴った。  福助は、結葉(ゆいは)が初めて飼った生き物だったからだろうか。  何て可愛いんだろう!とそのつぶらな瞳に魅了されたのを思い出す。  可愛くて可愛くてギューッと力の限り抱きしめたくなる気持ちを、そんなことをしたら潰しちゃう!と、グッと奥歯を噛み締めて(のが)したっけ。
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