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漠然としたことを言って変に思われるより、少しだけ〝事実〟を織り交ぜた方が、より真実味を持たせられる。
結葉はかつて、福助を偉央に診てもらったことがあるし、役割分担が決められている『みしょう動物病院』では、小動物は院長である偉央の担当領分のはずだった。
時刻は九時半。
診察を開始して間もない時間だ。
きっとたくさん待たされるとしても、偉央が診察をしてさえいれば、「大丈夫ですよ」と言われるはず。
『大丈夫ですよ』
震える手でギュッと携帯電話を握りしめた結葉の耳元で、軽やかな声がそう告げて。
結葉はホッとして耳からスマートフォンを離してしまい、その後に続けられた『あいにく本日院長は不在にしておりますが、ハムスターを診られる獣医師は他にもおりますので――』という言葉を聞き逃してしまった。
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