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夕飯をまともに食べず、ちゃんとしたベッドで眠りもしない生活のせいで、無理が祟ってしまったのだろうか。
朝までほぼ一睡も出来なかった結果、偉央はマトモに立って居られないほどの眩暈に襲われて、なかなか起き上がることが出来なかった。
待合室に掛けてある時計を見ると、午前四時半。
もう数時間もすれば、スタッフたちがやって来て、『みしょう動物病院』のいつも通りの一日がスタートしてしまう。
(ダメだ……)
院長としては在るまじき情けないことだけれど、このままではとてもじゃないが仕事をすることが出来そうにない、と思ってしまった偉央だ。
(とりあえず、一旦マンションに戻るしかないか)
結葉の居ないあの部屋に帰るのは正直気が乗らないけれど、ここでずっと寝て居られない以上、自宅に戻るしかない。
(ベッドで寝れば、始業時刻までに回復出来るかもしれない)
そう思った偉央は、自分が中にいたため、作動させて居なかった警備会社のセキュリティシステムをオンにすると、ふらつく足を鼓舞しながら『みしょう動物病院』を出る。
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