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玄関扉を開けて家に入ったと同時、靴を脱ごうとしたらバランスを崩してシューズクロークに置かれていた靴を、いくつか足元に払い落としてしまった偉央だ。
いつもならすぐに拾って土間には何もない状態にするのだけれど、いまはとてもじゃないがそんな気力はない。
ふと視線を落とした足元。
自分の靴に混ざって、結葉の小さなパンプスなどが散乱しているのを見て、偉央はギュッと胸が締め付けられるような思いがした。
結葉を監禁していた最終日、服は全て取り上げたけれど、靴だけは敢えて残したのを思い出す。
もしも結葉が決死の覚悟で逃げ出したとして、履き物がなかったら足を怪我してしまうと思ったから。
自分が足枷をつけてしまったことで痛々しいくらいに足首に傷を負ってしまった結葉に、あれ以上手傷を負わせるのは忍びないと思ってしまったのだ。
(結葉の足の怪我は治っただろうか)
ズルズルと身体を壁にこするようにして寝室を目指しながら、偉央はそんなことを思った。
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