33.久々の我が家

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***  抱えた紙袋のせいで前がよく見えないけれど、やはり自分はここの住人だったんだなぁと思いながら、結葉(ゆいは)は淀みのない足取りでかつて偉央(いお)と住んでいた最奥の一室を目指した。  オートロックで、扉が閉まれば勝手に鍵が掛かってしまうホテル仕様のようなその玄関扉に、最初のうちは慣れなくて戸惑ったのを思い出す。  生体認証キーでなかったら、鍵を部屋に置き去りで締め出しに、なんてこともしょっちゅうあったかも知れない。  そのシステムのせいで、偉央(いお)と微妙な空気のまま家に帰宅したときなんかは、偉央(いお)に押し込まれるように部屋に入って、彼の背後で扉が閉まって施錠音が鳴り響いた途端〝閉じ込められた〟という息苦しさを感じさせられたのを思い出す。  惣菜というのはそれなりに水分を含んでいるからか結構重く感じられて、部屋前で一旦紙袋を持ち上げ直すと、結葉(ゆいは)は今度は左手人差し指をドア付近のセンサーに付ける。  ピッと耳馴染みのある音に続いてガチャっという解錠音がして、結葉(ゆいは)は恐る恐る扉を開けた。  結葉(ゆいは)の動きを感知したのか、玄関ホールのセンサーライトが反応して明かりが灯る。
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