33.久々の我が家

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 そんなことを思いながら、上がり(かまち)に惣菜入りの袋をそっと置いて、散らばった靴をいつもの習慣でシューズクロークに仕舞う。  そうしながらそんなことを考えていた結葉(ゆいは)だ。  床に置いていた紙袋をもう一度抱え上げてから、振り返った玄関先は、いま結葉(ゆいは)が脱いだスニーカーだけがある状態に片付いていた。 「よし……」 (やっぱりここには靴、散らばってない方がいい)  部屋が荒れると、そこに住む人間の心もどんどん(すさ)んでしまう気がして片付けずにはいられなかった。  実際は逆なんだろうけれども、結葉(ゆいは)はここを綺麗にすることで、少しでも偉央(いお)のゴチャゴチャした心が整えばいいな、と思った。 ***  リビングに入ると、カーテンが閉ざされたままの室内は薄暗くて。  何だか暗い、というだけで家の中の空気もどんよりと重苦しく感じられてしまう。  実際には二四時間換気システムのおかげで、窓を開けていなくても空気が澱むということはないのだけれど、明るさの与えるイメージというのは大きいらしい。 (偉央(いお)さん、もしかして長いことカーテン、開けたりしてないのかな)
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