33.久々の我が家

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 空気がずっと滞留しているような息苦しさを感じた結葉(ゆいは)は、カーテンを開けて部屋に灯りを取り入れる。  そのままキッチンに行くと、カウンターの上に持ってきた荷物を一旦置いてから、換気扇のスイッチも押した。  ついでに切タイマーもオンにしておいたので、もし切り忘れてここを出ることになったとしても数分経ったら自然にファンが止まるはずだ。  高層階に位置するこの部屋は、窓を開けると風が強過ぎて部屋の中のものが散乱してしまうから、基本的には換気のために窓を開けることは出来ない。  自分がここに滞在する時間はごくわずかだけれど、せめてその間くらいは、と思ってしまった結葉(ゆいは)だ。 「よしっ」  小さく気合いを入れるようにつぶやくと、結葉(ゆいは)は紙袋の中から持ってきたタッパーを一つずつ取り出していく。  ひとまず全部を袋から出して台上に並べた後で、冷蔵庫を開けてみてどこに入れるか思案しようと思って。  久しぶりに対面する、長らく慣れ親しんできた愛用の冷蔵庫に、何だか感慨深い気持ちになる。
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