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真ん中のところに切り込みがあって、両側に向けて扉が観音開きになる冷蔵庫は、二人ぐらしには十分すぎるほどの大きさの六〇〇Lで、いつも中にはそこそこにゆとりがあったのだけれど。
(嘘……。何にも入ってない……)
開けてみると、びっくりするぐらい物が入っていなくて。
肉や野菜はおろか、牛乳や卵すら貯蔵されていなかった。
確かに冷たい飲み物が欲しければ、最悪ウォーターサーバーの水を飲めばよい。
だけど……それにしたって。
逆に結葉が作って飲んでいた麦茶がそのまま入っていたのにもゾクッとして……絶対傷んでるよね、と思った結葉は、それを冷蔵庫から取り出して中身を流しにぶちまけた。
何だかよくわからないモヤモヤとしたものが浮いていた、「お茶〝だったもの〟」に、思わず眉根が寄ってしまったのは仕方がないだろう。
水を出して流しから気持ちの悪い液体を洗い流してから、空になった容器を洗おうとスポンジを手にして、ふと止まってしまった結葉だ。
(着たままだと袖口が濡れちゃう?)
いま上に羽織っているのは、想と一緒にショッピングモールで買ったコートだ。
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