33.久々の我が家

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*** 「い、お、さん……」  ゆっくり振り返ってみると、やはりそこに居たのは偉央(いお)で。  結葉(ゆいは)はオロオロと視線を彷徨わせる。 「もしかして……帰ってきて……くれた、の?」  ポツリポツリと、まるで答えを聞くのを怖がっているみたいに問いかけられて。  それが分かっていてもどうしようもないから懸命にフルフルと首を横に振ったら、偉央(いお)がとても悲しそうな顔で結葉(ゆいは)を見詰め返してきた。  覇気が全く感じられない偉央(いお)の様子に、一瞬ほだされそうになった結葉(ゆいは)だ。  でも、ここで選択肢を間違えたらまた元の木阿弥になってしまう。  偉央(いお)には見えない所でグッと拳を握って自分を鼓舞すると、結葉(ゆいは)は小さく吐息をついて、寝室前に立つ夫をじっと見つめた。 「偉央(いお)さん、お手紙くれたでしょ? 『もう一度私の手料理が食べたい』って……。だから……」  流しの縁を掴んだ手に、知らず知らず力がこもってしまう。  結葉(ゆいは)は指先が白くなるぐらいギュッとそこを握ってしまっていたことに気が付いて慌てて手を離すと、恐る恐る偉央(いお)の反応を(うかが)った。  今は距離もさることながら、システムキッチンが間にあるから、おいそれと偉央(いお)に触れられる心配はないはずだ。
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