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だけど少しでも偉央がこちらに近付いてきたら、しっかり距離を取ろうと思って。
警戒心が視線に滲み出ていたのかもしれない。
偉央は小さく溜め息を落とすと、
「……そっか。わざわざ……僕のためにそんなことを。本当に有難う……」
それでも淡く微笑んで。
その悲しそうな笑顔に、結葉はギューッと胸が締め付けられる。
(偉央さん、痩せた?)
いや、痩せたというよりやつれた、と言った方が正しい気がした結葉だ。
「偉央さん、ご飯、ちゃんと食べていらっしゃいますか?」
思わずそんなことを問い掛けてしまったのは、偉央が余りにも弱々しく見えたから。
「……どうだろう。食べてないことはないんだけど……余り食は進まない、かな。……何か久しぶりに会えたのに情けなくてごめん……」
プライドの高い偉央が、弱々しいところを他者に見せること自体珍しいことだ。
力なくこぼされた言葉に、結葉は気が付けば、いま冷蔵庫に仕舞ったばかりのタッパーを取り出して、「少し召し上がられませんか? 私、準備しますので」と誘い掛けていた。
それはほぼ無意識に口をついて出てしまっていたセリフで。
偉央が結葉の言葉に、彼女を見詰めて驚いたように「え……?」とつぶやいた。
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