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それを見て、結葉は今更のようにソワソワしてしまう。
「あ、あのっ……折角持ってきたので……その、感想をお聞きしたいなって」
タッパーを手に落ち付かない結葉だ。
(私、何を言ってるの……?)
あんなに怖かったはずの偉央なのに。
何だかいま目の前にいる偉央は、結葉の知っている彼ではないように見えたから。
「キミが嫌じゃないなら……お願い……しよう、かな」
ややして偉央がそう答えて結葉に微かな笑みを向けてくる。
その笑顔は、結葉が偉央と付き合っていた頃によく見せてくれた優しい表情に似ていたから。
結葉は、懐かしさに胸の奥が小さく疼くのを感じた。
「じゃあ早速用意しますね」
それを払拭するように皿を取りに食器棚に行って。
偉央の方へ背を向けた途端、背後でガタンッと音がして、結葉はビクッと肩を跳ねさせた。
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