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「――偉央さんっ⁉︎」
だけど結葉が恐る恐る振り返ったら偉央が寝室前で膝をついているのが見えて。
結葉は現状も忘れて思わず彼のそばに走り寄っていた。
「どうしたのっ? 具合が悪いのっ?」
偉央のすぐ横に跪いて、殆ど無意識。
彼の背中に触れて俯けられた顔を覗き込んだら、そのままギュッと抱きしめられた。
「い、おさっ⁉︎」
突然の抱擁に驚いた結葉が身体をギュッと固くしたら、偉央が小さな声でポツリと言った。
「ごめん。ちょっとだけ肩を貸してもらえないかな」
その言葉に、偉央は自分を抱き締めたのではなく、支えにしたかっただけだったんだと気付かされた結葉は、小さくコクリと頷いた。
頷きながらも、怖くて気持ちをしっかり持っていないと身体が小刻みに震えてしまいそうで。
でも、だからと言ってこんなに弱っている偉央を放り出すことは出来なかった。
「――本当にすまない。キミは……僕のことが怖いのに」
自分でも抑えているつもりだったけれど、偉央にも震えているのが伝わってしまったらしい。
力無い声で謝罪されて、結葉はフルフルと首を振った。
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