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「こ、わくないって言ったら嘘になるけど……でも、偉央さんを支えるのは嫌じゃない……」
考えてみれば、偉央が自分に対してこんな弱い部分を見せたことは、彼との長い付き合いの中で一度もなかった気がした結葉だ。
「だから……変に気を遣わず私を頼って?」
そのぐらい偉央が弱っているのもあるのだろうけれど、自分の弱さを見せてくれる今の偉央となら、ちゃんと話が出来る気がして。
「立てますか?」
結葉自身、偉央を支えたままでは立ち上がることが出来なかったから、一旦先に自分だけ立ち上がらせてもらって、偉央に恐る恐る手を差し出した。
偉央はそんな結葉を切なげな目で見上げてくると、そっと伸ばされた手を握る。
「有難う……結葉」
間近で偉央に名前を呼ばれて、結葉は無意識だったけれどトクン……と心臓が跳ねたのを感じた。
偉央の低音ボイスで名前を呼ばれるのが好きだったな、とふと思い出して切なくなって。
偉央とこの部屋で再会して、名前を呼ばれたのはこれで二度目。
最初に「結葉?」と呼び掛けられた後は、まるで意図的ででもあるかの様に「キミ」と呼び掛けられていたから。
結葉はグッと奥歯を噛み締めると、押し寄せる諸々の感情を一旦胸の奥底に押し込めた。
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