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「――このところ面倒くさがって……三食まともに食べていなかったツケが回ってきたのかな。いい大人が体調管理も出来ないとかホント情けない話なんだけど……今日は明け方からずっと目眩が酷くてね。仕事も休まざるを得なかったんだ」
言い訳をするみたいに一息に言って、偉央が、彼を見詰める結葉からふっと視線をそらせた。
偉央は食事面だけを取り沙汰したけれど、きっと睡眠もちゃんと取れていないんじゃないかと、自分のことをマトモに見ようとしてくれない偉央を見下ろして思った結葉だ。
薄暗くてハッキリとは見えないけれど、曲がりなりにも数年間寝食をともにした男性だ。
彼の、目の下のくまに気付かない結葉ではない。
「少し休まれた方がいいと思います。眠れそうですか?」
聞いたら、偉央が「いや……」と悲しそうな顔で結葉を見上げてくる。
「せっかくキミが来てくれているのに眠るのは勿体無い……」
ややして小さくポツンとこぼされた言葉に、結葉は瞳を見開いた。
「偉央さん……」
確かに偉央が眠ってしまったら、そっとここを出ようと思っていた結葉だ。
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