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「お願い結葉、もう少しだけ……キミの声を聞かせて?」
切な気に見上げられて、結葉はギュッと拳を握りしめた。
本当なら今すぐにでもここを出たい。出ないといけない。
そう思うのに――。
「卵焼きと肉じゃがぐらいなら食べられそう?」
今日タッパーに詰めて持ってきた中ではその辺りがあまり胃腸に負担を与えないかな?と思った結葉だ。
さっき、食事の支度をすると言った事もあるし、何か口にしてもらってから無理にでも寝んでもらおう。
結葉の言葉に頷く偉央を見て、「用意してくるので横になって待っていてくださいね」
念を押すように偉央に言いながら、そんな風に思った。
***
結葉がキッチンに料理を取りに行くと言ったら、偉央はすごく不安そうな顔をして。
「ちゃんと戻ってくるので」
結葉はまるで小さな子供に言い聞かせるみたいに偉央にそう言わなければいけなかった。
卵焼きと肉じゃがを温めるついでに、フードストッカーからレンジで温めたら食べられるレトルトのご飯を取り出すと、ほかほかに温めた後でふと手を止める。
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