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普段なら自分の仕事中自由にしている結葉のことをそんなに気にしないでいられる想なのだが、何故か今日は今朝方の結葉の様子が引っ掛かって仕方がない。
結葉が想に嘘をつく必要なんてないはずなのに、どうしてこんなに心がざわつくのかは分からない。
けれど、まるで透明な水にポツンと落とされた一滴の墨汁みたいに、結葉の言動に違和感が拭えない想だ。
強いて言えば〝勘〟だろうか。
(そう言や、御庄さんからの手紙って、何が書いてあったんだろ)
結葉はあの夜、とうとう想の前でそれを開封することが出来ず終いで。
まだ心の準備が出来ていないから、と淡い笑みを浮かべた結葉の表情が、今でも鮮明に脳裏に焼き付いている想だ。
結局想は、結葉が旦那からの手紙を読んでどういう反応をしたのか。……いや、そもそもそれを読んだのかどうかすら知ることが出来ずにいる。
結葉は、偉央から送られてきた離婚届をまだ提出していない。
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