34.出て来ない結葉

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 普段なら自分の仕事中自由にしている結葉(ゆいは)のことをそんなに気にしないでいられる(そう)なのだが、何故か今日は今朝方の結葉(ゆいは)の様子が引っ掛かって仕方がない。  結葉(ゆいは)(そう)に嘘をつく必要なんてないはずなのに、どうしてこんなに心がざわつくのかは分からない。  けれど、まるで透明な水にポツンと落とされた一滴の墨汁みたいに、結葉(ゆいは)の言動に違和感が拭えない(そう)だ。  強いて言えば〝勘〟だろうか。 (そう言や、御庄さん(だんな)からの手紙って、何が書いてあったんだろ)  結葉(ゆいは)はあの夜、とうとう(そう)の前でそれを開封することが出来ず終いで。  まだ心の準備が出来ていないから、と淡い笑みを浮かべた結葉(ゆいは)の表情が、今でも鮮明に脳裏に焼き付いている(そう)だ。  結局(そう)は、結葉(ゆいは)が旦那からの手紙を読んでどういう反応をしたのか。……いや、そもそもそれを読んだのかどうかすら知ることが出来ずにいる。  結葉(ゆいは)は、偉央(いお)から送られてきた離婚届をまだ提出していない。
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