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だから戸籍上、二人は夫婦なわけだし、想が介入する問題ではないというのも分かっているつもりだ。
だが、結葉が助けを求めてきた時の酷い有り様を知っている想としては、どうしても気にせずにはいられないのだ。
ほぅ、っと吐息をつくと、想は気持ちを切り替えるように軽トラのハンドルをギュッと握り直した。
***
結葉のことを気にしつつも、何とか午前中の仕事に集中した想だ。
今日は商店街に程近い場所にある、山波建設管理のアパートの一室の改修工事に携わっていて。
午後からも引き続き同じ現場で作業を行う予定になっている。
昼になったし、車ん中で結葉にメールでも送ってみるか、と思っていた矢先――。
作業着の胸ポケットから取り出したばかりのスマートフォンが、着信を知らせるバイブを伝えてきた。
画面を見ると、市内の固定電話からのようだが、生憎未登録の番号らしく、数字だけが表示されている。
市内からなら、知らない番号でも仕事絡みの場合が多いのを経験上知っている想だ。
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