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前に結葉に頼まれてクリーニング済みの制服を返しに行った際、あれでも一応と思い、「何かありましたらご連絡頂けますか?」と自分の携帯番号を伝えていたことを思い出した。
ああは言ったけれど、結葉が自分のところで生活している以上、何もありはしないだろうと、あちらの番号は敢えて登録していなかった想だ。
もし必要に駆られたとしても、調べれば出てくるのは分かっていたし、最悪出向けば済むこと。
こちらからどうこうすることはないと思っていた。
なのに――。
『あの、今朝結葉さんが十時前に一人でこちらにいらっしゃいまして……。お部屋に戻られたっきり出ていらっしゃらないので……その、心配になってご連絡を差し上げました』
言われた言葉の意味が分からなくて、想は思わず「え?」とつぶやいていた。
「結葉が一人でそちらに?」
再度確認するみたいに斉藤が告げた言葉を繰り返したら『はい』と返ってきて。
『山波さんは今日のことについて結葉さんから何かうかがっていらっしゃいませんか?』
問われて、想は「いや、何も……」と答えるしかなかった。
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