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『実は……いつもでしたら今の時間帯……というかこのところほぼずっと……結葉さんのお宅はお留守だったのですが……』
そこで言いにくそうに一旦言葉を止めた斉藤に、想は嫌な汗が背中を伝う。
『私たちがいる時間帯のことではないのでハッキリとは申し上げられないのですが、今日は早朝にご主人がご帰宅なさったという報告を夜の担当者から受けています』
普段なら一住人の在宅や不在を申し送りするような事はないらしい。
だが、今日は偉央がエントランスで跪いてしまうぐらい調子が悪そうだったから、少し気にかけておいて欲しい、と言伝があったそうで。
『私たちが把握している限りではご主人も外出なさっておられませんし……その……もしかしたら』
そこで言葉を濁した斉藤だったが、想にも彼女の言わんとしていることが分かった。
「……結葉が部屋に入ってからどのぐらいになりますか?」
想は心臓がバクバクするのを必死に抑えながら告げたけれど、声が震えるのを止められくて。
『――かれこれ二時間くらいになります』
斉藤も想の緊張が伝染したみたいに、固い声音でそう返してきた。
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