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コンシェルジュとの電話を切ってすぐ、想は結葉に電話をかけてみた。
だけど何度かけてみても、留守電が作動するばかりで一向に繋がらない。
ラインも送ってみたけれどいくら待っても既読になる気配がなくて。
「クソッ」
思わず舌打ち混じりに吐き捨てると、想は車のエンジンをかけた。
助手席に載せた結葉お手製の弁当がふと目に入ったけれど、今日はこれを食べているゆとりはなさそうだった。
***
商店街に程近い現場から、結葉が住んでいたタワーマンションまで車で――渋滞などに遭わずスムーズに行ければ――約十分。
気持ちがやたらと急いているからか、信号待ちですらもどかしいと思ってしまった想だ。
それに、今日はやたらめったら信号に引っ掛かるように感じるのは、気のせいだろうか。
前方で赤いランプを灯す信号機を睨み付けるように見詰めながら、想は我知らずあれこれと思いを馳せる。
(結葉。何でお前俺に何も言わずに一人でマンションに行ったりしたんだよ……)
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