34.出て来ない結葉

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***  (そう)御庄家(みしょうけ)のあるタワーマンションに辿り着いたと同時、ポツポツとにわか雨が降ってきて。  今日は雨が降るなんて予報、ひとつもなかったはずなのに、と雨を避けるように手をかざして建物に近付きながら思った(そう)だ。 (こんな馬鹿らしい胸騒ぎ、どうか杞憂(きゆう)であってくれ)  そう願わずにはいられない。  予報にない雨降りは、自分の不安を象徴しているみたいで、(そう)は凄くイヤだった。 (結葉(ゆいは)……。頼むから無事でいろよ⁉︎)  現地に着いたら先ほど着信があった番号に折り返すよう指示を受けていた(そう)は、車を降りてマンションに向けて歩きながらスマートフォンを操作する。  画面をポツポツと雨が濡らしたけれどそんなの今の(そう)にはどうでもよかった。  スマホを耳に当てたまま大股で歩いてエントランスまで行って――。  (そう)が、コンシェルジュたちがいる受付けを真正面に認めたのとほぼ同時、電話が繋がって通話口から『ロック、解除しましたのでそのままお入りください』という声が聞こえてくる。
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