34.出て来ない結葉

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 斉藤たちの方も入り口の様子を気にしてくれていたんだろう。  ほぼタイムラグなしで、歩みを止めることなく建物内に入れた(そう)だ。 「三二階の一番奥。三二〇一号室が御庄(みしょう)さんのお宅の部屋番号です」  言われるまでもなく、一度体調の悪そうな結葉(ゆいは)を伴って部屋前まで行ったことがある(そう)だ。  偉央(いお)に、結葉(ゆいは)のことで牽制した場所だ。  よく覚えている。 「あの……ちなみに結葉(ゆいは)は――」  ダメ元だと分かっていながらも一応問いかけたら「まだ。――彼女もご主人もお見かけしていません」と鎮痛な面持ちで斉藤が言って。  彼女のすぐ横で『白木』と言うネームプレートを付けた女性も、不安そうな顔で(そう)を見つめていた。 「分かりました。とりあえず行ってみます」 (バカ結葉(ゆいは)! 心配かけやがって!)    心の中でそう吐き捨てながら、(そう)はエレベーターホールに駆け出していた。  三二階ともなれば、さすがに階段を駆け上がって行くのはしんどい。
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