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斉藤たちの方も入り口の様子を気にしてくれていたんだろう。
ほぼタイムラグなしで、歩みを止めることなく建物内に入れた想だ。
「三二階の一番奥。三二〇一号室が御庄さんのお宅の部屋番号です」
言われるまでもなく、一度体調の悪そうな結葉を伴って部屋前まで行ったことがある想だ。
偉央に、結葉のことで牽制した場所だ。
よく覚えている。
「あの……ちなみに結葉は――」
ダメ元だと分かっていながらも一応問いかけたら「まだ。――彼女もご主人もお見かけしていません」と鎮痛な面持ちで斉藤が言って。
彼女のすぐ横で『白木』と言うネームプレートを付けた女性も、不安そうな顔で想を見つめていた。
「分かりました。とりあえず行ってみます」
(バカ結葉! 心配かけやがって!)
心の中でそう吐き捨てながら、想はエレベーターホールに駆け出していた。
三二階ともなれば、さすがに階段を駆け上がって行くのはしんどい。
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