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きっと箱が降りてくるのを待つ時間がどんなにもどかしくても、エレベーターを使った方が確実に早く上まで行けるはずだ。
エレベーターの呼び出しボタンを押した想は、はやる気持ちを抑えながら階数表示を見つめた。
***
目が覚めた時、微かに寝室の外――キッチン辺りで何かが動いている音がしている気がして、偉央はとうとう自分は幻聴まで聴こえるようになってしまったのかと溜め息をついた。
今日の未明に部屋に戻ってきて、酷くふらつく癖に、ついいつもの習慣でシャワーだけは浴びて。
冷静になって考えてみれば、よく風呂場で倒れなかったものだと自分の悪運の強さに嫌気がさした。
あのままバスルームで倒れて死ねていたら、結葉を失った苦しみから解放されたかも知れないのに。
そもそも、偉央が仕事場から帰宅するなり風呂に直行していたのは、愛する妻に何か悪いものを伝染すようなことになってはいけないと思っていたからに他ならない。
独身の頃は感染力の高い感染症にでも出会わない限り、そこまで神経質に気を遣っていなかった偉央だ。
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