34.出て来ない結葉

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 エレベーターから真正面に見える突き当たりの部屋が、(そう)が目指す三二〇一号室だ。  (そう)は部屋にたどり着くのに夢中で深く考えていなかったけれど、このまま自分があの部屋の前まで出向いて扉の外側から騒いだとして、中から開けてもらえなかったら意味がないのではないかと今更のように気が付いた。  だからと言って、そのままおめおめと立ち去ることが出来なかった(そう)だ。  とりあえず行ってから考えようと部屋前まで行くと、奇跡だろうか。  扉に何かが挟まっていて、ドアが完全に閉まりきっていない。  ふと足元を見ると、ドアの隙間から靴べらが覗いていて。  もしかして結葉(ゆいは)が、もしもに備えて退路を確保していたのだろうかと思って――。  それでも一応他人の家だ。  確証もないのに不安だけでいきなりドアを開けて中に入るのは気が引けた(そう)だ。  一旦はドアノブに手を掛けた(そう)だったけれど、少し逡巡して。  ノブを握った手はそのままに、玄関扉横に設置されたインターフォンを押した。  中から、来訪者を知らせる電子音が漏れ聞こえてきた――。
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