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今までの結葉なら、偉央に縋り付くようにされたら、きっと流されていたと思う。
偉央との関係を何とか修復したいと願っていた頃には、結葉だって彼との子供を心の底から望んでいたから。
もし数ヶ月前に今と同じことを言われていたならば、結葉の心は動かされていただろう。
だけど……あんなに望んだはずの言葉が、不思議なくらいちっとも嬉しくないと思ってしまった。
そればかりか、〝何故偉央さんはいまになってそんな馬鹿なことを言って私を困らせるの?〟と思って。
もちろん、子供は今でもすごくすごく欲しい結葉だ。
人並みに「お母さん」になることにだって憧れているし、山波家で純子を見ていたら、やっぱり母親になるのっていいなという思いが強くなった。
自分の両親にしてもそうだけれど、ゆくゆくは結葉も温かな家庭を築いて、美味しいご飯を作ったりしながら、家族の幸せを守りたいと痛感させられて――。
だけどその家庭は偉央とでは築けない、と嫌というほど実感してしまったから。
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