35.二度目のSOS

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 今までの結葉(ゆいは)なら、偉央(いお)に縋り付くようにされたら、きっと流されていたと思う。  偉央(いお)との関係を何とか修復したいと願っていた頃には、結葉(ゆいは)だって彼との子供を心の底から望んでいたから。  もし数ヶ月前に今と同じことを言われていたならば、結葉(ゆいは)の心は動かされていただろう。  だけど……あんなに望んだはずの言葉が、不思議なくらいちっとも嬉しくないと思ってしまった。  そればかりか、〝何故偉央(いお)さんはいまになってそんな馬鹿なことを言って私を困らせるの?〟と思って。  もちろん、子供は今でもすごくすごく欲しい結葉(ゆいは)だ。  人並みに「お母さん」になることにだって憧れているし、山波家(やまなみけ)で純子を見ていたら、やっぱり母親になるのっていいなという思いが強くなった。  自分の両親にしてもそうだけれど、ゆくゆくは結葉(ゆいは)も温かな家庭を築いて、美味しいご飯を作ったりしながら、家族の幸せを守りたいと痛感させられて――。  だけどその家庭は偉央(いお)とでは築けない、と嫌というほど実感してしまったから。
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