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偉央のことはもちろん気の毒だと思う。
自分がいなくなってこんなに彼がやつれてしまうだなんて思ってもみなかった。
ひどいことを沢山されたけれど、一時は情を通わせた相手だ。
元気になって欲しいと心の底から願っている。
でも――。
もしもそのために自分が必要だというのなら、申し訳ないけれどその望みを叶えてあげることは出来ないと、結葉は痛烈に思った。
「偉央さんっ! お願い、離して‼︎ 私、みんなが待ってる家に帰りたいのっ!」
気がついたら自分でもびっくりするぐらいハッキリと、偉央を拒絶する言葉が出ていた。
***
チャイムを鳴らして、中の様子に神経を研ぎ澄ませていた想の耳に、結葉の「想ちゃん、助けてっ」という声が聞こえてきた。
それは気のせいかと思うくらい微かな声だったけれど、想は結葉の声を決して聞き漏らさない。
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