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結葉が想に助けを求めてきたのはこれで二度目だ。
旦那に監禁されていた結葉が電話で助けを求めて来た一度目とは違って、今回は結葉の声音が――物理的には聞こえにくい状況であったにも関わらず――とても力強く感じられて。
その声に後押しされたみたいに勢いよく扉を押し開けたと同時、奥の方から「私、みんなが待ってる家に帰りたいのっ!」という結葉の声が聞こえてきた。
想は、その声の凜とした響きに、思わず気圧されて立ち止まってしまっていた。
「みんな」と言われただけで別に「想ちゃん」と呼ばれたわけではなかったのに、結葉が言った〝みんな〟には間違いなく自分も入っていると確信した想だ。
「結葉っ!」
想は結葉の声に呼応したように半ば叫ぶ調子で幼馴染みの名を呼ばわって、迷いなく扉の内側へ足を踏み出した。
見えはしないけれど、状況から鑑みるに、結葉がいま対峙している相手は御庄偉央に違いない。
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