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あんなに旦那に対して怯えた目をしていた結葉が、いまみたいな毅然とした声を出せたんだとしたら――。
自分たち家族と暮らす中で、結葉が少しずつかも知れないけれど、本来の彼女らしさを取り戻していたんだと実感できた想だ。
想の知っている三つ年下の小林(御庄)結葉という女の子は、強く出られると流されやすい優柔不断なところも持っていたけれど、〝ここ〟という譲れない部分では絶対に引かない芯の強さを兼ね備えた女性だった。
嫌なことは嫌だとちゃんと言える、そんな娘だったから。
***
結葉が明確に自分に逆らう態度を示したことに、偉央はショックを隠せなかった。
いま、彼女は確かに我が家に帰って来ているはずなのに、一体どこへ帰りたいと言うんだろう?
そう思って虚ろな目で結葉を見下ろしたら、玄関扉がバン!と開く音がして、「結葉っ!」と言う声が家中に響き渡った。
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