35.二度目のSOS

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 あんなに旦那に対して怯えた目をしていた結葉(ゆいは)が、いまみたいな毅然(きぜん)とした声を出せたんだとしたら――。  自分たち家族と暮らす中で、結葉(ゆいは)が少しずつかも知れないけれど、本来の彼女らしさを取り戻していたんだと実感できた(そう)だ。  (そう)の知っている三つ年下の小林(御庄(みしょう)結葉(ゆいは)という女の子は、強く出られると流されやすい優柔不断なところも持っていたけれど、〝ここ〟という譲れない部分では絶対に引かない芯の強さを兼ね備えた女性だった。  嫌なことは嫌だとちゃんと言える、そんな娘だったから。 ***  結葉(ゆいは)が明確に自分に逆らう態度を示したことに、偉央(いお)はショックを隠せなかった。  いま、彼女は確かにはずなのに、帰りたいと言うんだろう?  そう思って虚ろな目で結葉(ゆいは)を見下ろしたら、玄関扉がバン!と開く音がして、「結葉(ゆいは)っ!」と言う声が家中に響き渡った。
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