35.二度目のSOS

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「――結葉(ゆいは)」  ――ねぇ結葉(ゆいは)。お願いだからもう一度僕の方を見て?  そう思って呼びかけたのに、結葉(ゆいは)の意識は完全に(そう)にとらわれてしまっているらしい。  偉央(いお)の方を見ようともしないばかりか、 「(そう)ちゃ――……っ!」  他の男の名を呼ぼうとするとか、言語道断じゃないか。  ――頼むからその愛らしい唇で、僕以外の男の名前を気安く呼ばないで⁉︎  結葉(ゆいは)(そう)の名を呼ぼうとした瞬間、偉央(いお)は無意識に結葉(ゆいは)の首にグッと手をかけていた。  ほんの少し力を込めれば、きっと結葉(ゆいは)の華奢な首なんて、簡単に(ひね)り潰せてしまう。  「い、ぉさっ……どぉ……、して?」と偉央(いお)の名を呼んで、苦しそうに首に掛けられた手を掴んでくる結葉(ゆいは)を見下ろして。  もうこれで終わりにしたんでいいんじゃないかと……。  愛しい結葉(ゆいは)が自分の手を離れて誰かのものになるぐらいなら、いっそこのまま彼女を(くび)り殺してしまった方が、心穏やかでいられるに違いないよね?と思ってしまった偉央(いお)だ。  だって、少なくともいまこの瞬間だけは、結葉(ゆいは)の瞳に映るのは偉央(いお)だけだったから。  偉央(いお)は、かつてはあんなに結葉(ゆいは)を殺してしまうんじゃないかと恐れていたことも忘れて、結葉(ゆいは)の首にかけた手にほんのわずか、躊躇(ためら)いがちに力を込めた。
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