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想が寝室のドアを開けた時、偉央が結葉の上に馬乗りになっているところだった。
ベッドは入り口に対して並行に置かれていたので、偉央の手が伸びた先――。
ベッドの上の結葉が偉央の下、華奢な首元に手を掛けられている姿がハッキリと見えて。
偉央の手を遠ざけたいみたいに結葉の白い手がギュッと旦那の手を握っていた。
なのに――。
想の目の前で、偉央の腕を掴んでいた結葉の手が、パタリとベッドの上に落ちて、ダラリと力なく伸ばされたのが見えた。
それを目にした瞬間、想は偉央を殴り飛ばして、結葉の上から跳ね除けていた。
「結葉!」
向こう側へ薙ぎ倒された偉央のことなんて構っている気にはなれなかった想だ。
グッタリと手足を弛緩させた結葉の姿は、想をただただ不安にさせて。
締められた首を見ると、それほど強い力は加えられていなかったのか目立つ痕は残っていないのに。
結葉が目を開けないという事実だけが、重く重く想の心に伸し掛かってくる。
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