35.二度目のSOS

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 と、不意に(そう)の背後から伸びてきた手が、結葉(ゆいは)の足の下に丸めた布団を差し込んで、彼女の足を高くした。  突然手を出してきた偉央(いお)に、(そう)が勢いよく振り返って睨みつけたら、 「脳に……血が足りてない」  偉央(いお)が疲れたようにそうつぶやいて、結葉(ゆいは)を悲しそうな目で見下ろした。 「キミが止めてくれなかったら……僕はきっと結葉(ゆいは)を殺してしまっていた……」  偉央(いお)が沈痛な面持ちでそうつぶやいたのと、結葉(ゆいは)のまぶたがピクッと揺れて、ゆっくり瞳が開かれたのとがほぼ同時で。  結葉(ゆいは)は意識を取り戻してすぐ、眉根を寄せて喉を押さえると、数回小さく咳き込んだ。  それを見て、偉央(いお)がホッとした様に吐息を落とすと、結葉(ゆいは)の咳き込む声に紛れて聞こえないぐらいの微かな声で「有難う」とつぶやいてベッドから降りる。  瞬間、キラリと光るものがベッドサイドに落ちて。 (涙……?)  そう思った(そう)だ。  まるでそれを裏付けるみたいにこちらを一切振り返ろうともせず、フラフラと揺れる覚束ない足取りで偉央(いお)が寝室を出ていった。  そんな偉央(いお)をどうこうしようと言う気は、今の(そう)にはない。
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