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結葉を危険な目に遭わせたのも紛れもなくあの男だが、結葉が意識をとり戻す手助けをしてくれたのも、間違いなく御庄偉央だったから。
想には、偉央が何を考えているのかさっぱり分からないけれど、結葉を殺したいほど憎らしく思っているのも、殺さなくて良かったと涙を落とすくらい愛しく思っているのも。
そのどちらもが、疑う余地もなく偉央の本心なんだろうと思った――。
***
「想、……ちゃ……?」
意識を取り戻した結葉が、咳き込んだせいで涙に潤んだ目で、ぼんやりと自分を見上げてきて。
掠れた声で想の名を呼んだのを聴いて、そんな全てがどうでもいいと思ってしまった想だ。
「助……け、に……来て……くれた、の……?」
「ああ……」
結葉の途切れ途切れの問い掛けにぶっきらぼうに応えながら、想は結葉が今こうして自分の名前を呼んでくれて、泣きそうな顔で自分を見上げてくれることが心の底から幸せだと思った。
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