35.二度目のSOS

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「あ、の……偉央(いお)さ、ん……は?」  あんな目に遭わされてもそれを聞かずにはいられないのが結葉(ゆいは)なんだと少し腹立たしく思いながら、彼女の質問に(そう)は小さく首を振ることしか出来ない。  さっき玄関扉が閉まる音が聞こえた気がしたからきっと。  偉央(いお)はもうこの家の中にはいないと思う。  だけど――。  自分達もここに長居は無用だから。 「帰ろうか」  静かに問いかけて、「うん」と頷いた、まだわずか、ぼんやりしている結葉(ゆいは)を横抱きに抱き上げると、(そう)はゆっくりと歩き出した。  もう二度と、結葉(ゆいは)偉央(いお)と二人きりで逢わせたりしない。  そう心に誓いながら――。
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