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「想ちゃん、ごめんね」
想の腕の中で、結葉が心底申し訳なさそうな顔をして謝罪の言葉を口に乗せた。
想は何も言わずに結葉を抱く腕にギュッと力を込めてそれに応える。
「偉央さんからのお手紙にね、『最後に私の手料理が食べたかった』って……そんな感じのことがたった一言だけ書かれていたの」
それを見たらどうしても偉央に手料理を食べさせたくなったのだと結葉は言って。
「偉央さんとは本当に色々あったけど……私、偉央さんのこと、怖いと思ったことはあっても……その……、嫌いだって感じたことは一度もなかったから」
想が何を答えなくても、結葉はまるでそれを話すのが責務であるかのように話し続ける。
ある意味独白のようだな、と想は思った。
自分の気持ちを整理するために話しているみたいな……そんな気がしたのだ。
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